top of page
執筆者の写真皐月-Satsuki-

「たとえ明日が晴れなくても。」あとがき

更新日:2020年7月25日

どうも。ひっそりとホームページを作成してました皐月-Satsuki-です。


今回はここを活用し、5月にリメイク版を公開しました処女作である「たとえ明日が晴れなくても。」のあとがきを書こうと思います。

ネタバレありのため、プレイされた方のみご覧ください。


この度「たとえ明日が晴れなくても。(略称:明日晴な。)」をプレイしていただきありがとうございます。

ゲームとしては処女作であり、非常に思い入れの深い作品のため何から語ろうか迷ってますが、まず最初に当作品の起端について話したいと思います。



1.起端について


この作品は私が高校3年生の時に、選択授業である小説研究の課題として書いた小説がもとになっています。(今思うとよくこんな純愛ものを学校に出したな…)

文字制限があり、25,000文字を超えると減点対象になるという条件の下執筆したことをよく覚えています。

そのためシーン毎に文字数を設定して、かなりの取捨選択をしました。

短編にしては起伏が激しいストーリー構成になったのも、この影響が大きいかと思います。

ですがその一方で、書きたかったシーンを書けなかった作品でもあるのです。

(結果、26,257文字で見事に減点対象に)


後にノベルゲームにもなる本作ですが、小説版とゲーム版どちらも絡んでくるのが就職活動です。


まずは小説版について。


冒頭でも述べた通り、小説版「たとえ明日が晴れなくても。」を執筆したのは高校三年生の時です。

この時期は就職活動があり、将来に対する不安はもちろんのこと、今の自分に対する力不足等を感じ、葛藤している時期でした。

そんなある日、田舎の地元から都会へ大企業の採用試験に臨むことになります。

詳細については割愛しますが、思い通りにはいかず夜の道を放浪していた時に「小説研究もあるし何かネタを見つけて、ここにきた理由を見つけよう」と思考を切り替えます。

必死にアイデアを模索している中、ふと自動販売機で買った「いろはす」を見つめ、突如閃きました。


①なぜこんなにペットボトルが柔らかいのか?

②これはリサイクルをしやすくするため

③リサイクル……リサイクル……これだ!


最初のアイデアは「リサイクル=使わないものを再利用する」から転じて「使えなくなった人間=人間のクズを再利用する」でした。

「罪人を狩って、新たに善人として再構築させる天使」や様々な案が浮かびましたが、ふと頭に過ったのが「使えなくなる人間にしか見えない少女」という存在です。

その少女から「あなたは凶悪犯罪を犯すから、その前に死になさい」と言われたら、人はどう行動するのだろうか――そう考えだすと物語りの輪郭が一気に浮かびました。

犯罪の内容を当時最低だと思っていた「強姦殺害」とし、それまでに至る過程として「恋人の死」を採用しました。

その時からこの物語は「たとえ明日が晴れなくても、今日を晴れにするために前へ進む。そうすればきっと今日も明日も晴れるかもしれない」をテーマにしようと決めていました。

タイトルについてもそのテーマ通りに「たとえ明日が晴れなくても」になりました。

(この時は『。』はなかったのですが、雨をイメージしてその後『。』を付けた記憶があります)


そして月日は流れて専門学校2年生。


ここでまた就活が訪れます。

企業説明会に参加するなど就職活動をしていると、とあるゲーム会社と縁があり、試験を受けることになりました。

しかし、そのゲーム会社は非常に有名どころで倍率が高く、ゲーム学科でもない私は書類選考で落ちることは目に見えてました。

そこで「アピールのため何かゲームを創ろう」と思ったのが、すべての始まりでした。

ソシャゲを運用するゲーム会社でしたが、そんなクオリティのゲームを作れる技量はありません。でも「ノベルゲームなら作れるかも…」と思い、検索して出会ったのが、

ティラノビルダーでした。

「これなら知識がない自分でもゲームがつくれる!」

そう思った私は早速ノベルゲーム制作を始めました。

書類の提出期限まで2週間。この期間内で完成が現実的なのは――短編。

私が書いてきた小説の中で、唯一の短編が「たとえ明日が晴れなくても。」のみ。

もう答えは一つしかありませんね。

私はこうしてリメイク前である「たとえ明日が晴れなくても」を制作しました。


この2週間は大車輪のような創作の日々を送りました。

明日晴とティアナのイラストを描き、背景やBGMを探し、

そして初めて触るティラノビルダーでノベルゲーム化していく……

正直、シナリオを直している時間などありませんでした。

今思うと「昔の自分はよく2週間で作ったなと」と感心すらするレベルです。


結果、熱意も伝わってか書類選考は突破できました。

しかし今、私はゲーム業界に勤めてはいません。つまりそういうことです。


そしてさらに月日は流れ4年後の2019年1月


社会人になった私は自由な時間も限られ、創作の世界からはすっかり離れていました。

(実はゲーム会社を受ける時に、業界の下調べとして始めたソーシャルゲームにどっぷりとはまってしまったというオチもあります)

そんな中、ふと自分で作ったノベルゲーム「たとえ明日が晴れなくても。」をプレイしたくなりました。理由は分かりません。本当にふと思いました。


さすがにストーリーは覚えていますが、4年以上経過しているものなので細かい部分の記憶はありませんでした。

それが非常に新鮮で、夢中になってしまいました。

読後、私は泣いてました。恥ずかしながら、ぼろぼろ泣いてました。

物語りだけではありません。

これを作った時の記憶、これを作れた昔のパワー、

本当は書きたかったシーン、

そして創作を趣味にしていた時の、あの充実感


様々な感情が込み上げての涙でした。


「こんな怠惰な人生じゃダメだ」と強く思った私は、

この感動をくれた本作をリメイクすることを決めました。


……と長々書いてしまいましたが、起端については以上にしたいと思います。

振り返ってみると、私の人生にかなりの影響を与えていますね。



2.ストーリーについて


ここからはストーリーの解説や裏話をしていこうと思います。

まずいきなり舞台設定からですが、北海道の札幌をイメージしてます。

理由は単純で、このストーリーを思いついたのが、就活で訪れた札幌だったからです。

ティアナと最初に出会ったスクランブル交差点も、札駅前のあの交差点をイメージしてます。

しかし、ノベルゲーム化に伴って背景CGを使用するため、札幌という舞台設定は削除しました。


2-1.「たとえ明日が晴れなくても。」の本当の結末は……


まず物語りの前提として、「たとえ明日が晴れなくても。」は、

ティアナがいなければ、誰一人救われない超絶バッドエンドな結末を迎える話しです。

明日晴が死に、恋人を失った一輝はその悲しみで強姦殺害を犯し、被害者も出て、親友の雨恵は自分を責め続けて精神が崩壊します。

その最悪な結末を避ける為に、ティアナは一輝に「死ぬことが最良」だと宣告します。

これは彼女が「人間のクズ」となってしまう人を那由他ほど見てきた結果、辿り着いた答えです。

個人的な見解ですが、ティアナのいうことは決して間違いではないと思ってます。

Ifの世界で「もしも一輝が死んでいた」なら、明日晴は生きてました。

事故の原因になる「雨恵の誕生パーティー」へ参加しないからです。

明日晴にとっては超絶バッドエンドな結末ですが、雨恵も、死ぬはずの被害者も健在です。

雨恵からの慰めを受けれることを考えても、客観的に見れば最悪な結末からは「好転した」と言っていいでしょう。

でも、それは本当に最良の道なのだろうか。

それを追求したのが本作のテーマでもあります。


終盤には、明日晴、一輝、そしてティアナの「たとえ明日が晴れなくても、」に続くそれぞれの言葉があります。


2-2.明日晴の死は予感されたくなかった


次のお題は突然の急展開を迎える「明日晴の死」です。

私はこれに関しては「読者に勘づかれたくなかった」という思いがあります。

現実世界、事故死は何の予兆もなく突然やってきます。

突然すぎるが故に、人は受け入れることができなく、否定して、自分を見失ってしまいます。

その極限状態を作品で表現したかった私は、明日晴の死を予感させないように、ハッピーエンドで終わり、あだかもエピローグに入ったかのような物語構成にしました。

「急展開」というご感想をお持ちになったのであれば、それはある意味狙い通りではあります。


2-3.明日晴と雨恵は一輝の家に行く予定だった


雨恵の誕生パーティーの買い出しに行くときに、グループ分けを提案したのは明日晴だったという描写がありました。

これは「一輝にハンカチを返すついでに、雨恵とも会わせたかった」という意図があったためです。

あの時渡したハンカチと、前々から言われていた「明日晴の彼氏見てみたい」という言葉が絡み合い、最悪な結果となってしまいました。


2-4.明日晴との別れ


本作の一番見どころ(だと思う)であるラストシーン。

実はこのシーンはリメイク前にはありません。

文字制限と、リアルさを追求したことによって削ったシーンです。

その時は「死んでしまった人に会う」ことに対して否定的で、自分の美学に反すると思っていたからです。(文字数が多くなることも後押ししてます)

ですが、執筆後も「やっぱりこのシーン書きたかったなぁ」と思う自分もいました。

それから6年後となった今では「とにかく明日晴が少しでも報われて欲しい」という思いしかありませんでした。(時間の流れは思考を変える)


約束の世界にいる明日晴は、一輝が今後どうなってしまうのかを悟っています。


「私は一輝のことなら何でも知ってるつもり。

 私が死んじゃったせいで、未来から目を背けることも。

 過去を求めすぎて、未来を壊してしまうことも」


「私との約束をずっと守ろうとして――前へ進むことをやめてしまうことも」


「運命なんて私には分からない。だけど知ってるんだよ。

 だって一輝は優しすぎるから」


私が死んじゃったせいで、未来から目を背けることも。

 ⇒一輝が一輝でなくなってしまうこと

過去を求めすぎて、未来を壊してしまうこと

 ⇒ ティアナが言っていた宣告通りになってしまうこと

私との約束をずっと守ろうとして――前へ進むことをやめてしまうことも

 ⇒未来を捨てて、約束の世界にずっと閉じ籠ろうとすること

「運命なんて私には分からない。だけど知ってるんだよ。

 だって一輝は優しすぎるから」

 ⇒ティアナに向けて。

  あなたみたいに運命が分かるわけじゃないけど、ずっと一緒にいた私なら分かる。


最後は一輝の意思で、約束の世界から抜け出しました。

最愛の人との別れを受け入れた一輝は、過酷な運命すら変える大きな力を――




3.キャラクターについて


■上星 明日晴(じょうぼし あすは)


当時、私が好きなもの(黒髪ロング、健気、とにかくいい子、ニーソ)を全て詰め込んだ理想の女の子です。

ストーリー上、この健気な性格が心に響いた方も多いのではないかと思います。

名前もお察しの通りタイトルから来ており、苗字もラストシーンの「星になって上から見守っている」ことを連想して「上星」となりました。

私史上、もっとも名前がはまったキャラであり、性格とデザイン含め、一番愛着があるキャラといっても過言ではありません。

心から明日晴の幸せな未来を見たかった……。ベビーカーを押す一輝に泥酔するシーンは「本当はくるはずだった幸せな未来を、明日晴に少しでも見せたかった」からです。

でも最後に、想いの世界とはいえお別れが出来たのは、明日晴にとっても私にとっても救いでした(思いが通じたのか、ラストシーンのイラストは自分史上最高クラスの出来)。


○声優様について


リメイク版から明日晴の声を、紅月ことね(現:琴音有波)さんに当てていただきました。

紅月ことねさんは「シークレットゲーム」の「北条かりん」役を担当されていたことでも有名であり、私も以前から名前を存じておりました。

そんな方が、まさか明日晴の声優を引き受けていただけるなんて……この上ない喜びでした。

プレイされた方々ならお分かりになると思いますが、ラストシーンの泣きは本当に圧巻です。何度も明日晴につられて泣いてしまいました。

(ご本人曰く、最後のシーンは感動的で自然と涙がこぼれていたとのことです)

琴音有波さん、この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。



■ティアナ


明日晴と正反対の性格で設定したキャラです。見た目も明日晴が黒髪なのに対して白髪です。(体格も……)

作中でも触れられていますが、もとは冷酷な性格ではなく、普通の女の子でした。

実はこのシーンでジト目を使ったのは、本当は普通の女の子というのを見せたかったからです。


「人間のクズにしか見えない」彼女は、その人を救うために助言を与え続けていた過去があります。

それでも運命を変えることはできず、悲惨な結末を何度も何度も見てきた彼女は次第に心も壊されてしまいました。

「どうすれば運命を変えることができるのだろう」

それを一輝が示してくれて、最後に見せたあの笑顔は、私の中でもお気に入りのシーンです。

きっと次に「使えなくなる人間」と出会った時は、「死になさい」なんて言わないでしょう。

余談ですが、ティアナは明日晴と比べて登場回数があまりにも少なかったので、その分イベントCGを増やしました。


名前の由来について、ティアナは「夜明け」を意味します。

(タイトル的に「雨上がり」の方が良い気もしますが、ティアナは雨というより「暗い夜が続いている」イメージだったので)

ティアナの長く続いていた暗い夜が、一輝が示してくれた光によって明ける――

そのシーンをイメージして「夜明け」の意味を持つ「ティアナ」になりました。


○声優様について


リメイク版からティアナの声を、陽向葵ゅかさんに当てていただきました。

サンプルボイスを拝聴した時は、何度も感嘆の声を漏らしたことをよく覚えています。

ティアナの冷酷な口調と透き通った声のイメージ……まさに理想通りでした。

もっと声を聞きたかったのが本音ですが、あれ以上登場回数を増やすことは出来ませんでした……。

個人的には一輝と2回目に会う場面の第一声「あなた、まだ生きてたの?」が大好きです。

陽向葵ゅかさん、この場をお借りしてあらためて御礼申し上げます。



■雨恵(うえ)


学校でも「お天気コンビ」と呼ばれているぐらい仲が良い、明日晴の親友です。

明日晴が「晴れ」に対して雨恵が「雨」です。

雨にはどちらかと言うとマイナスなイメージがありますが、みずみずしい潤いをあたえるという意味もあります(明日晴の言葉ですね)

名前の由来については、作中でも紹介されている通り「見方を変えればいいことがきっと見つかる」です。

これは作中を通して一番伝えたいメッセージでもあり、それを雨恵の名前を通じて伝えれたのは自分としても良かったと思います。

親友を失った雨恵があの後どうなったのか――それはラストシーンの明日晴の言葉から想像できると思うので、ここでは明言しません。


現在アップロードされている「明日晴な。」が最終版の予定ですが、もしアップデートがあるならきっと雨恵のイラストだと思います。




4.最後に


拙い部分が多々あったかと思いますが、一つの作品を完成させた事は何より自信になりました。

以前は一人黙々と作業しておりましたが、本作については、声を当ててくれた声優様をはじめ色々な方にお世話になりました。

あらためまして、創作活動の楽しさに気付くことが出来ました。

4年間創作の世界から離れていた私ですが、またこうして戻ってこれたのは、間違いなく本作があったからこそです。

あとは創作の世界で結果を残し、私の人生を変えたのは「明日晴な。」だったと思える日が来るように努力していく所存です。


本作をプレイしていただけた方の心が、いつまでも晴れでありますように。




5.次回作について


「たとえ明日が晴れなくても。」リメイク版をリリースしてから早5ヶ月……時間が経過するのは酷なまでに早いですね。

さて、次回作についてですが、ゆっくりではありますが制作はスタートしております。


タイトルは「夢見た少女のニルヴァーナ」


この作品は死ぬまでに絶対に書き上げたいと思っていた作品であり「明日晴な。」より前に構想があった作品です。

物語のあらすじはまだ公開はしませんが、イラストについては絵師様にご依頼させていただきました。

「明日晴な。」のようなお粗末なイラストではございません!

既にヒロイン総6名のラフ画をいただいておりますが……ものすごく可愛いのです! この可愛さを今すぐにでも皆様と共有したいのですが、そこはぐっと抑えます……。

そして「明日晴な。」同様に、ヒロインはフルボイスを予定していて、新作は依頼という形ではなく、募集をさせていただきたいなと考えております。

あとはコミケにも出してみたい!とかも思っていて、夢は膨らむばかりとなっています。

公開は早くても2021年以降になると予想してます。

どうぞこちらも続報をお楽しみに!


皐月-Satsuki-

閲覧数:404回0件のコメント

Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page